“DOME” = Design, Observation, Materials, Engineering.
今回ご紹介する「DOME」は1954年に創業したBELLヘルメット所有の研究開発施設である。
2011年よりカリフォルニア州スコッツバレーに拠点を移し、現在に至るまで、モータースポーツ、サイクルスポーツ、スノースポーツ用ヘルメットの研究開発に重点を置き、その名の通り、より安全でより高い品質の製品を創り出すための社内テストラボとして機能している。
今回、弊社スタッフがこのDOMEを実際に訪問し、取材を行った。
本記事からDOMEへのこだわりやその規模を通して、BELLの安全、品質に対する想いを感じ取って頂ければ幸いである。
(左) 施設外観
(右) 敷地内にはアメリカ国旗、カリフォルニア州旗が掲げられている
施設内のいたるところにあるDOMEのロゴ
(左)製作段階のクレイモデルや試作品などの展示
(右)デザインプロセスの一例の展示
この「DOME」という名称は以下の言葉の頭文字が由来となっている。
D – DESIGN=デザイン
O – OBSERVATION = 観測
M – MATERIALS = 素材
E – ENGINEERING = 工学技術
DOMEではデザイン段階から製品となるまでの工程や強度テストなどといった、R&D(リサーチ&ディベロップメント = 研究開発)を一貫して行うことが可能となっている。
施設内には、各国の厳しい
安全基準テスト用機材を含む、約50種類以上の機材に加え、3Dプリンター、射出・熱成形装置、風洞、CNCマシンなどが完備されている。
このようにDOMEには、ヘルメットを0から作り、安全性や品質を高め、世に送り出すために必要な設備がすべて揃っている。
(左) 落下時の衝撃テストで安全性を確認する機材
(右) 様々な衝撃を再現するために落下点の形状は様々なものが用意されている。
(左) ヘルメットが脱げ落ちないかをテストする機材(MIPSのテストにも使用される)
(右) チンストラップ(顎紐)の堅牢性、耐久性テストを行う機材
(左) ヘルメットの空気抵抗、使用中のヘルメット内の温度やベンチレーションの効果のテストを行う風洞
(右) 強いUV(紫外線)の照射で、経年劣化を短時間で再現するテストを行う機材
ヘルメットを上部から落とし、転がり落ちた際の衝撃を再現する機材
高温や低温の耐久性を再現する巨大なオーブンと冷蔵庫
(左) 3Dプリンター
(右)金型などを削り出す際に使用するCNCマシン
BELLはなぜここまで高額な機材を多数導入し、一貫して自社でテストを行うのか?
その答えは、より多くのトライ&エラーの繰り返しを短時間で実現し、限られた時間の中で、より安全性の高い製品を創り出すため他ならない。
通常、製品化までには「設計・デザイン → テスト → 修正」という工程が発生する。
世界中の多くのヘルメットブランドは工場と連携し、試作品の行き来を経てヘルメットを製品化するが、BELLでは自社内にて製品の量産段階直前までスピーディーに工程を進めることができる。
発売までの限られた時間の中で、デザイナーからエンジニアまでが同じ空間で協力し、製作を進めることで、他ブランドよりも良い品質、安全性のあるものを世に送り出すことが実現可能となるのだ。
BELL製品開発ディレクターのLoz Broers(ロズ・ブローズ)さんからもDOMEについて直接話を伺った。
「私は様々なヘルメットブランドに従事してもう20年以上になり、BELLには既に9年以上所属しています。BELLに様々なチャンスを求めて入社しましたが、個人的にはこの施設があるということが非常に魅力的で、入社を決めた最大のポイントでした。
なぜなら、このテストラボがあることで、他社と比べて非常に迅速に製品のイノベーションをすることができるのです。これこそがBELLの最大の強みだと考えています。こういったテストラボを自社で所有しているのは、ヘルメット業界では非常に稀だと思います。
安全性と品質を高めることはBELLでも非常に重要視をしていますし、それこそが我々BELLの企業理念でもあります。」
それらの言葉からもBELLというブランドは「各国の安全基準をクリアするのは当たり前、その上でどこまで高い安全性、品質を追求できるか」という姿勢・考え方であることが強く伺える。
安全に対するこのような企業理念、姿勢や企業努力の積み重ねが長年世界でトップに立ち続けているヘルメットブランドたる所以である。